なぜ、ダイエットにおいて“糖質制限”と“アルコール制限”が必要なのか?

ダイエットにおいて、「糖質制限」と「アルコール制限」は、それぞれ異なるメカニズムで体重・肥満管理に影響を与えるため、どちらも重要な要素となります。

本稿では、医療ダイエット治療における“糖質制限”と“アルコール制限”の重要性と、なぜ必要なのか? について解説します。

ダイエットにおける「糖質制限」の重要性

糖質制限は、主に血糖値とインスリンのコントロールを通じて全身の体脂肪蓄積を抑制し、脂肪燃焼を促進する点で重要なファクターです。

  1. インスリンの過剰分泌抑制と脂肪蓄積の防止:
    • 糖質を摂取すると血糖値が上昇し、それを下げるためにインスリンが分泌されます。インスリンは、血糖を細胞に取り込ませてエネルギーとして利用したり、グリコーゲンとして貯蔵したりする一方で、余った糖を中性脂肪として体脂肪に変換・蓄積する働きがあります。
    • 糖質制限により血糖値の急激な上昇が抑えられると、インスリンの分泌も抑制されます。これにより、脂肪が蓄積されにくい状態を作り出し、すでに蓄積された脂肪の分解を阻害する要因を減らすことができます。
  2. 体脂肪の燃焼促進(ケトーシス):
    • 糖質の摂取量を大幅に減らすと、体は主要なエネルギー源である糖が不足していると判断し、**体内の脂肪を分解してエネルギーとして利用し始めます。**この際、肝臓で脂肪から「ケトン体」が生成され、これが脳や筋肉などのエネルギー源として使われる「ケトーシス」という状態になります。
    • ケトーシス状態では、体は効率的に体脂肪を燃焼するため、ダイエット効果が期待できます。
  3. 食欲の安定と満腹感の持続:
    • 血糖値の急激な変動が抑えられることで、食後の眠気や急激な空腹感が軽減され、食欲のコントロールがしやすくなります。
    • 糖質を減らす分、タンパク質や脂質の摂取が増える傾向にあり、これらは消化に時間がかかるため、満腹感が持続しやすく、間食や食べ過ぎを防ぐ効果があります。

ダイエットにおける「アルコール制限」の重要性

アルコール制限は、主にカロリー摂取の抑制代謝への悪影響の軽減を通じて、ダイエット治療効果を増幅するために重要なファクターです。

  1. 高カロリーであること:
    • アルコール自体にカロリーがあります(1gあたり約7kcal)。これはタンパク質や糖質(1gあたり約4kcal)よりも高く、脂肪(1gあたり約9kcal)に近い値です。
    • さらに、カクテルや甘いお酒には、糖質が多く含まれているため、総カロリーが非常に高くなります。例えば、ビールや日本酒、ワインなども糖質を含んでいます。
    • アルコールによるカロリーは「エンプティカロリー」と呼ばれることがありますが、これは「栄養素が少ない割にカロリーが高い」という意味であり、カロリーがないわけではありません。摂取したカロリーは体脂肪として蓄積され得ます。
  2. 食欲増進作用:
    • アルコールには食欲を増進させる作用があると言われています。お酒を飲むと、普段は食べないような高カロリーなもの(揚げ物、ラーメンなど)が食べたくなったり、食事量が増えたりすることがよくあります。
    • また、理性が緩み、食べ過ぎてしまう傾向も高まります。
  3. 脂肪燃焼の阻害:
    • 体はアルコールを「毒物」と認識し、最優先で分解・排出しようとします。このアルコール代謝の過程で、肝臓は他の代謝活動(特に脂肪の分解・燃焼)を後回しにして、アルコールの処理に集中します。
    • 結果として、アルコールを摂取している間は脂肪が燃焼されにくくなり、体脂肪として蓄積されやすくなります。
  4. 筋肉分解の促進とテストステロンの低下:
    • 過度なアルコール摂取は、筋肉の分解を促進し、筋肉の合成を妨げる可能性があります。筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、太りやすい体質につながります。
    • また、男性ホルモンであるテストステロンの分泌を抑制する可能性も指摘されており、これは筋肉の成長や脂肪燃焼に影響を与えることがあります。
  5. 睡眠の質の低下:
    • アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠の質を低下させます。深い睡眠が妨げられると、食欲を調整するホルモン(レプチンやグレリン)のバランスが崩れ、食欲が増進したり、代謝が低下したりする可能性があります。

いかがでしょうか?

糖質制限インスリンの分泌を抑え、体を脂肪燃焼モードに切り替えることで、体脂肪の蓄積を防ぎ、効率的な減量を促します。そして、アルコール制限余分なカロリー摂取を抑え、脂肪燃焼を阻害する要因を取り除くことでダイエット治療効果を増強する効果をもたらします。

どちらもダイエット治療を成功させる上で非常に重要ですが、それぞれのメカニズムが異なるため、両方を十分に徹底することでより効果的な体重減少・ダイエット効果が期待できます。

特にお酒を飲む習慣がある場合は、ダイエット治療中は、一大決心をした上で思い切って「断酒(約6-8ヶ月間の治療期間中は、アルコールを一切断つ」こと重要です。

※ちなみに当院では、“常習的に飲酒をされる患者様”に対しましては、治療期間中(6-8ヶ月間)は完全に断酒をしていただいており、その後のダイエット効果に関して非常にご好評を頂いております。

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