肥満を放置すると、ガンや認知症を引き起こす?!

常々、“ダイエット治療は究極かつ最善の予防医療”と提唱していますが、今回はその理由について解説します。

肥満は、体内の過剰な脂肪組織(特に内臓脂肪)が慢性悪性炎症(chronic low-grade inflammation)を引き起こすことで、さまざまな病気の種を発生させます。

この炎症は、アディポカイン(脂肪細胞から分泌されるサイトカイン)のバランス崩れや、マクロファージの浸潤、酸化ストレスなどが原因で発症します。

1. 肥満によりインスリン抵抗性を発症 → 2型糖尿病へ進行

  • メカニズム: 脂肪組織からTNF-α、IL-6、MCP-1などの炎症性サイトカインが過剰分泌され、インスリンシグナル伝達(IRS-1/PI3K経路)を阻害。レプチン抵抗性も加わる。
  • 結果: 血糖コントロール障害 → 2型糖尿病、高血糖による血管障害。

2. 肥満→動脈硬化 が進行して、血流が悪くなる→ 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中)

  • メカニズム: 炎症性サイトカインが血管内皮を傷害し、酸化LDLの取り込みを促進。マクロファージが泡沫細胞化し、プラーク形成。
  • 結果: 冠動脈疾患、末梢動脈疾患、高血圧。

3. 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD) → NASH → 肝硬変(お酒を飲まなくても、肥満により肝硬変になる!)

  • メカニズム: 肝臓への遊離脂肪酸流入と炎症(IL-6、TNF-α)が肝細胞を傷害。線維化を促進。
  • 結果: 脂肪肝 → 炎症性肝炎(NASH) → 肝硬変、肝癌リスク。

4. 肥満が関節症(変形性関節症)を発症させる:重い体重で足腰の関節を傷めてしまう)

  • メカニズム: 機械的負荷に加え、アディポカイン(レプチンなど)が軟骨細胞に炎症を誘発。滑膜炎も併発。
  • 結果: 関節破壊、慢性疼痛。

5. がんリスクが増加する(大腸がん、乳がん、子宮内膜がんなど)

  • メカニズム: 慢性炎症がDNA損傷、細胞増殖促進(NF-κB経路活性化)。インスリン様成長因子(IGF-1)増加も関与。
  • 結果: 発がんリスク1.5〜2倍(特に内臓脂肪型肥満)。

6. 肥満は、認知症やうつ病、睡眠時無呼吸症候群を発症させる

  • 認知症(アルツハイマー病): 脳への炎症波及、βアミロイド蓄積促進。
  • うつ病: 炎症性サイトカインがセロトニン代謝を阻害。
  • 睡眠時無呼吸症候群: 気道周囲脂肪による炎症・閉塞。

7. 肥満により引き起こされた悪性炎症がわかる血液検査

  • CRP(C反応性タンパク): 肥満で1.5〜3倍上昇。※CRPは、病的な炎症で上昇する検査項目。
  • IL-6、TNF-α: 脂肪組織から直接分泌。
  • アディポネクチン低下: 抗炎症作用が減弱。

では、肥満によるこのような病気を防ぐにはどのようにケアすれば良いでしょうか?

肥満の諸悪の根源は「糖質の過剰摂取」が原因です。

“糖質(炭水化物)”は“タンパク質”や“脂質”と並んで“三大栄養素”に分類されます。

多くの肥満の方々は、糖質=砂糖(甘いもの)と解釈していることが多いですが、糖質とは「多糖類(オリゴ糖・デキストリン・でんぷん)」「二糖類(砂糖)」「単糖類(ブドウ糖・果糖(くだものに含まれる))」これらすべての総称です。わかりやすく整理すれば、糖質=炭水化物+甘いもの+くだもの です。

ということは、甘いものだけでなく、ご飯・パン・麺類・ケーキなどのスウィーツ・和菓子 はすべて糖質ということになります。

これらを過剰に摂取することにより、基礎代謝分(需要分)を超えた余った糖質はインスリンの作用で脂肪へ変換され、知らず知らずのうちに内臓や皮下にある脂肪細胞に蓄えてしまい、結果として“肥満”してしまうわけです。

これらをコントロールし、健康的に痩せて病気を予防するためには、正しく糖質制限しながらダイエットすることが求められます。

将来、認知症・脳卒中・肝硬変 などの恐ろしい病気にならないためにも、今のうちにお近くのダイエット治療医へ相談することをお勧め致します。

炭水化物のイラスト(栄養素)

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