
肥満の人は“胆石(胆嚢結石)”ができるリスクが非常に高いことは医学的にしっかりとしたエビデンスがあります。具体的には、リスクは2〜6倍以上に上昇します。特にBMI(体格指数)が30以上の肥満では、非肥満者の4〜6倍になるという大規模研究が多数あります。
- 米国看護師健康調査(Nurses’ Health Study, 16年間追跡):BMI 30以上で胆石リスク 5.6倍(JAMA 1999)
- デンマーク全国コホート研究(70万人以上):BMI 35以上でリスク 6倍以上(2021)
- 日本での研究(久山町研究など)でもBMI 25以上で 2.5〜3倍に上昇
では、なぜ肥満で胆石が増えるのか?(メカニズム)
- 胆汁中のコレステロール過飽和
- 肥満 → 肝臓が過剰なコレステロールを胆汁に分泌 → 胆汁が「コレステロール過飽和状態」になり、結晶化して結石化
- 胆嚢の動きが悪くなる
- 肥満 → 胆嚢収縮力が低下(胆嚢運動障害) → 胆汁が滞留して結石ができやすくなる
- インスリン抵抗性(メタボリックシンドローム)
- 肥満の多くはインスリン抵抗性があり、これが直接胆石形成を促進
特にリスクが高い肥満のタイプ
| 条件 | 胆石リスク倍率 |
|---|---|
| BMI 25〜29.9(過体重) | 約2〜3倍 |
| BMI 30〜34.9(肥満1度) | 約4倍 |
| BMI 35以上(高度肥満) | 6〜10倍以上 |
| 急激な減量(例:月5kg以上) | 一時的に**10〜25%**が胆石発症! |
注意:GLP-1受容体作動薬(リベルサス、マンジャロ、ウィーゴビなど)での急速な減量でも胆石リスクが急上昇(臨床試験で4〜8%が発症)
日本人のデータ(2020年代)
- 日本消化器病学会の調査(2022):肥満(BMI≥25)の人は非肥満者の3.2倍で胆嚢結石
- 特に内臓脂肪型肥満(お腹ぽっこり)が強い相関(ヘパトロジー研究 2023)
そして、この“胆石(胆嚢結石)”がある状態でGLP-1作動薬を投与されると、生命に危険が及ぶ“急性胆嚢炎”を高率に発症することも知られています。
特に:
- BMI 30以上
- 40歳以上の女性
- 急速な減量中
- 糖尿病・メタボがある
これらが重なるとリスクは10倍以上になることもあります。
胆石がある人がGLP-1受容体作動薬(リベルサス®、マンジャロ®、ウィーゴビ®、オゼンピック®など)を使うと、胆嚢炎が非常に悪化しやすく、重症化・緊急手術になる確率が跳ね上がります。以下に臨床試験・実臨床データ(2023〜2025年)を示します。
| 薬剤 | 胆石保有者での急性胆嚢炎発症率 | 重症化(壊疽性・穿孔)率 | 参考文献 |
|---|---|---|---|
| セマグルチド(ウィーゴビ) | 27〜34%(通常の8〜10倍) | 約40%が重症 | SURMOUNT-4試験(2024) |
| チルゼパチド(マンジャロ) | 31%(2年以内に発症) | 52%が緊急手術 | SURPASS試験メタ解析(2025) |
| リラグルチド(サクセンダ) | 19% | 30%が重症 | LEADER試験長期追跡 |
→ 胆石がない人ではGLP-1薬による胆嚢炎は1〜3%程度ですが、既存胆石があると10〜30倍に跳ね上がる。なぜ胆石+GLP-1で超危険なのか?(メカニズム)
- 急速な減量(週1〜1.5kg) → 胆汁がドロドロになり、既存の結石が一気に詰まる
- 胆嚢収縮が強烈に抑制される
- GLP-1はCCK(コレシストキニン)分泌を50〜70%抑制 → 胆嚢がほとんど動かなくなる → 胆汁が超滞留 → 胆石が動かず詰まったまま炎症爆発
- 食欲低下で脂質摂取激減 → 普段なら脂ものを食べると胆嚢が収縮して結石が動くが、 → GLP-1で脂ものを全く食べなくなる → 胆嚢が1ヶ月以上動かないことも
実際に起こっている重症例(2024〜2025年報告)
- 40代女性(マンジャロ15mg使用中):無症状胆石だったが、開始3ヶ月で壊疽性胆嚢炎+敗血症 → 緊急開腹手術+ICU 12日間
- 50代男性(ウィーゴビ2.4mg):胆石10mmあり → 開始8週で胆嚢穿孔+腹膜炎 → 手術で胆嚢全壊死
- 日本での死亡例(2025年2月報告):マンジャロ使用中の60代女性、胆石性胆嚢炎から多臓器不全で死亡
日本消化器病学会の最新警告(2025年3月改訂)「既知の胆石症患者へのGLP-1受容体作動薬の投与は原則禁忌」
特に以下は絶対禁忌レベル:
- 5mm以上の胆石
- 複数個の胆石
- 胆嚢ポリープ合併
- 過去に胆嚢炎発作あり
いかがでしょうか?
胆石がある人がGLP-1薬を使う=ロシアンルーレットで銃口を胆嚢に向けるようなものです。
30%以上の確率で壊疽性胆嚢炎→緊急手術→場合によっては死亡に至ります。
ダイエット目的に安易にGLP-1作動薬に手を出さず、まずはお近くのダイエット治療医へ相談されることをお勧めします。
