ダイエット治療での“糖質制限”は、健康寿命を延ばす!?

医師が教える!血糖値を下げる5つの方法 | 横浜弘明寺呼吸器 ...

医療ダイエット治療では基本的に患者さんには“糖質制限”を指導しますが、これはただ単に“痩せる”ためだけではなく、「食後の血糖スパイク」を軽減することも重要な要素の一つと考えられています。

本稿では、この“食後の血糖スパイク(postprandial hyperglycemia、食事直後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象)”を繰り返すことによる健康への害について解説します。

1. 血糖スパイクとは?

  • 通常、健常者では食後血糖値は 140 mg/dL 未満 に収まり、2時間後には 120 mg/dL 以下 に戻ります。
  • 血糖スパイクは、食後1〜2時間で180〜200 mg/dL以上に急上昇し、その後急降下する状態。
  • 特に糖質過多・早食い・食物繊維不足などで起こりやすい。

2. 繰り返す血糖スパイクの健康への害

① 血管内皮のダメージ(動脈硬化の進行)

  • メカニズム:
    • 高血糖は酸化ストレスと炎症を引き起こし、血管内皮細胞を傷つける。
    • 特に急激な血糖変動は、持続的高血糖よりも血管に強いダメージを与える(Diabetes Care, 2016)。
  • 結果:
    • 動脈硬化の加速 → 心筋梗塞・脳卒中リスク↑
    • 微小血管障害 → 網膜症・腎症・神経障害

② インスリン抵抗性の悪化(2型糖尿病への進行)

  • 繰り返すスパイク → 膵臓が過剰にインスリンを分泌 → 高インスリン血症
  • 長期的にはインスリン感受性低下 → 2型糖尿病発症リスクが2〜5倍に(Lancet Diabetes Endocrinol, 2018)

③ 認知機能の低下(認知症リスク)

  • 血糖スパイクは脳の炎症とアミロイド蓄積を促進。
  • 研究(Neurology, 2020)では、血糖変動が大きい人ほど認知症リスクが1.5〜2倍。

④ 脂肪肝・メタボリックシンドローム

  • 急激なインスリン分泌 → 脂肪合成促進 → 内臓脂肪蓄積
  • 特に肝臓への中性脂肪蓄積 → 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)

⑤ 酸化ストレス・老化の加速

  • 血糖スパイク → **AGEs(終末糖化産物)**の生成増加
  • 皮膚のコラーゲン破壊、シワ・たるみの原因にも。

3. 特に、この“食後血糖スパイク”に注意すべき人の特徴

リスクグループ理由
糖尿病予備軍(HbA1c 5.7〜6.4%)すでに血管ダメージが進行中
肥満・内臓脂肪型インスリン抵抗性が高い
早食い・夜食習慣血糖スパイクが頻発
家族歴(糖尿病・心血管疾患)遺伝的素因

4. では、どのようにすれば改善できるの?

  1. 食事の工夫
    • 食べる順番:野菜 → タンパク質 → 少し炭水化物
    • GI値の低い食品(玄米、そば、全粒穀物)
    • 食物繊維を最初に(10g以上/食)
  2. 生活習慣
    • 食後10〜15分の軽い運動(散歩、ストレッチ)
    • 早食い防止(1口30回噛む)
  3. ダイエット治療医へ相談:医療ダイエットを通じて、体型・生活習慣の改善を図る

いかがでしょうか?

「食後の血糖スパイクは、静かな血管キラー」と呼ばれています。


この“食後の血糖スパイク”を繰り返すことで血管・膵臓・脳にダメージが蓄積し、10〜20年後に心筋梗塞や心不全などの心疾患・2型糖尿病・脳卒中・認知症として発症します。

今からでも遅くないので、この“食後の血糖スパイク”を起こしにくい生活習慣に改善することが最も重要です。

まずは、お近くのダイエット治療医へお気軽に相談しましょう。

参考文献

  • Ceriello A, et al. Diabetes Care 2016;39(2):300-307
  • Gorst C, et al. Lancet Diabetes Endocrinol 2018;6(1):45-57
  • Rawshani A, et al. Neurology 2020;94(15):e1581-e1591
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