
みなさんは、「糖質疲労(とうしつひろう)」という言葉をご存じでしょうか?
この「糖質疲労」とは、炭水化物や甘いもの、果物やお酒などの糖質を含む食品などを過剰摂取することによって引き起こされる、血糖値の急激な乱高下(血糖値スパイク)が原因で生じる、心身の不調や疲労感を指す言葉です。
この概念は、多くの糖尿病専門医やダイエット治療医が提唱し、現代人の不調やさまざまな生活習慣病の大きな原因の一つとして注目されています。
本稿では、この「糖質疲労」について解説します。
糖質疲労が起こるメカニズム
糖質疲労の核心にあるのは、以下の血糖値の「ジェットコースター」のような動きです。
- 糖質の摂取と血糖値の急上昇:
- 菓子類、清涼飲料水、白米、パン、麺類などの精製された糖質(炭水化物)を一度にたくさん摂取すると、消化・吸収が非常に速く、血液中のブドウ糖(血糖)濃度が急激に上昇します。これが「食後高血糖」の状態です。
- インスリンの過剰分泌:
- 血糖値が急上昇すると、体は血糖値を下げるために膵臓から「インスリン」というホルモンを大量に分泌します。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませ、エネルギーとして利用したり、余分なブドウ糖をグリコーゲン(肝臓や筋肉に貯蔵)や脂肪として蓄えたりする働きがあります。
- 血糖値の急降下(反応性低血糖):
- 過剰に分泌されたインスリンが働きすぎると、今度は血糖値が急激に下がりすぎてしまい、低血糖状態を引き起こします。この血糖値の急激な上昇と下降の波が、グラフにすると針(スパイク)のように見えることから、「血糖値スパイク」と呼ばれます。
- 疲労感や様々な不調:
- 血糖値が急降下すると、脳に必要なエネルギー源であるブドウ糖が一時的に不足します。これが、脳の機能低下や自律神経の乱れを引き起こし、様々な不調や疲労感として現れます。
糖質疲労の主な症状
糖質疲労の症状は多岐にわたりますが、代表的なものは以下の通りです。
- 食後の眠気やだるさ: 特に昼食後など、糖質を多く摂った後に強い眠気や倦怠感を感じる。
- 集中力の低下、頭がぼーっとする: 脳へのエネルギー供給が不安定になるため。
- 疲れやすい、倦怠感が続く: 日常的に疲れが取れにくいと感じる。
- イライラ、気分の落ち込み: 血糖値の乱高下が自律神経や脳の神経伝達物質に影響を与えるため。
- 空腹感の増大、すぐに小腹が空く: 血糖値が急降下することで、体がエネルギー不足だと感じ、再び糖質を欲する悪循環に陥りやすい。
- 頭痛: 低血糖によるものや、血糖値スパイクが繰り返されることによる動脈硬化の初期症状である可能性も。
- 肌荒れ: 糖化が促進されるため。
- 体重増加、太りやすい: 余分な糖が脂肪として蓄積されやすくなるため。
- 手足の冷え: 血行不良が関係している可能性。
糖質疲労を放置するリスク
糖質疲労の状態を放置すると、単なる疲労感に留まらず、より深刻な健康問題につながる可能性があります。
- 糖尿病のリスク増大: 血糖値スパイクが繰り返されると、膵臓が常にインスリンを過剰分泌し続ける状態となり、インスリンを分泌する細胞が疲弊して、最終的に2型糖尿病の発症リスクを高めます。
- 動脈硬化の進行: 血糖値スパイクは血管の内皮細胞にダメージを与え、動脈硬化を促進します。これにより、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。
- 肥満: 脂肪として蓄積されやすくなるため、肥満につながります。
- その他: 脂肪肝、がん、認知症、心不全、自己免疫疾患など、様々な生活習慣病や慢性疾患との関連も指摘されています。
糖質疲労の対策と改善方法
糖質疲労を防ぎ、改善するためには、血糖値の急激な上昇を抑える食生活と生活習慣が重要です。
- 糖質の摂取量と種類を工夫する:
- 精製された糖質を控える: 白米、白いパン、麺類、砂糖を多く含む菓子、清涼飲料水などは血糖値を急上昇させやすいので控えめに。
- 未精製の穀物を選ぶ: 玄米、雑穀米、全粒粉パン、そば(蕎麦粉の割合が高いもの)、さつまいも、じゃがいもなどを選ぶと、食物繊維が豊富で血糖値の上昇が緩やかになります。
- 適量を守る: 必要なエネルギー量に応じて、糖質を摂りすぎないように意識する。
- 食べる順番を工夫する:
- 食事の最初に食物繊維が豊富な野菜、きのこ類、海藻類を食べる。
- 次に、肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質を摂る。
- 最後に、ご飯やパンなどの主食を摂る。
- この順番で食べると、食物繊維が糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
- よく噛んでゆっくり食べる:
- 早食いは血糖値を急上昇させる原因になります。よく噛むことで満腹感も得られやすくなります。
- 良質なタンパク質と脂質を摂る:
- タンパク質や脂質(特に、オメガスリーなどの良質な不飽和脂肪酸)は血糖値の上昇を緩やかにし、満腹感を維持するのに役立ちます。肉、魚、卵、大豆製品、ナッツ類、アボカド、オリーブオイルなどをバランス良く摂りましょう。
- 間食を見直す:
- 空腹時に甘いお菓子やジュースを摂るのは避けましょう。ナッツ、チーズ、ゆで卵、プレーンヨーグルト、低GIの果物(ベリー類など)などがおすすめです。
- 適度な運動を取り入れる:
- 食後15~30分程度の軽いウォーキングなど、体を動かすことで、食後の血糖値上昇を抑える効果が期待できます。
- 筋力トレーニングで筋肉量を増やすことも、基礎代謝を上げ、血糖値のコントロールに役立ちます。
- 十分な睡眠とストレス管理:
- 睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスを乱し、インスリンの働きを悪くする可能性があります。質の良い睡眠を確保し、ストレスを上手に解消しましょう。
いかがでしょうか?
上記のように、糖質疲労を起こさない食生活へ移行することで健康を簡単に手にすることができ、ひいてはダイエット効果や美容にも良い効果と恩恵を得ることが可能となります。
この糖質疲労は、現代人の不健康な食生活に起因する身近な病気です。上記の対策を実践して上手に日常生活に取り入れることで、疲労感の軽減だけでなく、スリムで健康なカラダをゲットでき、様々な生活習慣病(脳梗塞、心筋梗塞、ガン など)の予防にもつながります。