
当院で治療している患者さんによく聞かれる質問に、
「なぜ、糖質ゼロのビールを飲んでいるのに太るんですか?」があります。
本稿では、“糖質ゼロ”でもアルコールを摂取することで太ってしまうメカニズムについて解説します。
アルコール自体は「空のカロリー」という迷信が吹聴されているようですが、実際には複数の経路で体脂肪増加による体重増加(肥満)を引き起こします。
1. アルコール自体が高カロリー源であること(直接的なエネルギー供給)
- アルコール1gあたり7 kcalのエネルギーを提供(脂肪9 kcal、炭水化物・タンパク質4 kcalに次ぐ高さ)。
- 例:ビール350ml(アルコール5%)≈ 140 kcal、ワイン150ml(13%)≈ 120 kcal、日本酒1合(15%)≈ 190 kcal。
- これらは栄養素がほとんどない「空のカロリー」なので、満腹感が得られにくく、過剰摂取しやすい。
2. 脂肪の代謝を阻害(肝臓の優先処理)
- アルコールを摂取すると、肝臓はアルコールを最優先で代謝(アルコール脱水素酵素 → アセトアルデヒド → 酢酸)。
- この間、脂肪酸の酸化(燃焼)が停止。食事から摂った脂肪や体内脂肪が蓄積されやすくなる。
- 研究例:アルコール摂取後、数時間は脂肪燃焼が50%以上低下(American Journal of Clinical Nutrition, 1997)。
3. 食欲の増加と過食誘発
- アルコールは視床下部(食欲中枢)を刺激し、空腹感を高める(グレリン分泌↑、レプチン感受性↓)。
- 飲酒時の「つまみ」として高カロリー食品(揚げ物、ナッツ、ピザなど)を食べ過ぎる傾向。
- 実験:飲酒群は非飲酒群より平均200-300 kcal多く摂取(Appetite, 2012)。
4. インスリン感受性低下と脂肪蓄積
- 長期的な過度な飲酒はインスリン抵抗性を引き起こし、血糖が脂肪として蓄積されやすくなる。
- 特に内臓脂肪が増加(ビール腹の原因)。腹部脂肪は代謝異常リスクも高い。
5. 代謝率の一時的低下
- アルコール代謝中は基礎代謝が低下(体温低下、運動効率↓)。
- 翌日の倦怠感から運動量が減り、消費カロリーが減少。
6. ホルモンへの影響(特に女性)
- エストロゲン代謝異常 → 脂肪分布変化(特に下腹部・太もも)。
- コルチゾール(ストレスホルモン)増加 → 脂肪蓄積促進。
では、どのようにすれば太りにくくなるのか?
- 飲酒量を制限(15g/日以下)。
- 飲酒前後にタンパク質(肉・魚・豆腐)を摂る → 満腹感↑。
- 翌日は運動(脂肪燃焼再開を促す)。
- ダイエット治療医へ相談する。
いかがでしょうか?
たとえ“糖質ゼロ”の表記があっても、結局、アルコールを摂取すること自体が肥満の根本原因になることがおわかりになったことと思います。
アルコールの摂取をコントロールしながら、健康的にダイエットすることをおすすめ致します。
