“高濃度ビタミンC点滴療法”の抗がん効果について、解説します

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みなさんは“高濃度ビタミンC点滴療法”をご存じでしょうか?

当院でも導入している治療法で、近年世界中で脚光を浴びつつあります。

高濃度ビタミンC点滴療法(High-Dose Intravenous Vitamin C: IVC)は、ビタミンC(アスコルビン酸)を静脈注射で大量(通常1回あたり25g以上、最大100g以上)投与する治療法です。

経口摂取では血中濃度が低く限界があるのに対し、点滴では血中濃度を10-100倍以上に高め、がん細胞に対する選択的な毒性を発揮します。

この療法は、1970年代にライナス・ポーリング博士らが提唱したもので、新たな“苦痛の無いがん治療”として注目されています。

日本では保険適用外ですが、海外(米国やカナダ)で臨床研究が進んでいます。

本稿では、この“高濃度ビタミンC点滴療法”の抗がん効果のメカニズムについて解説します。

プロオキシダント作用(酸化ストレス誘導):

 血中濃度が15mmol/L以上になると、ビタミンCは過酸化水素(H2O2)を生成し、がん細胞のDNAやタンパク質を損傷します。がん細胞はカタラーゼ(H2O2分解酵素)の活性が低いため選択的に死滅します。一方、正常細胞はカタラーゼ活性が高いためダメージを受けにくいです。

  • エピジェネティック調節: ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害し、がん関連遺伝子の発現を抑制します。jeccr.biomedcentral.com
  • 免疫調整とEMT阻害: 免疫応答を強化し、上皮間葉転換(EMT)を逆転させることで転移を防ぎます。また、低酸素環境や腫瘍関連シグナル経路を阻害します。jeccr.biomedcentral.com
  • 化学療法増強: 抗がん剤の効果を高め、副作用を軽減する可能性があります。例えば、KRAS/BRAF変異の結腸直腸がん細胞でグリコリシス経路を標的化します。pmc.ncbi.nlm.nih.gov

これらのメカニズムは、in vitro(試験管内)や動物モデルで確認されています。

臨床的証拠と文献レビュー高濃度IVCの抗がん効果に関する文献は、1970年代からの初期研究から最近のランダム化試験まで多岐にわたります。

具体的な臨床試験の例

  • Ohno et al. (2009), Anticancer Research: 進行がん患者(n=未指定)でIVC(高用量)を単独投与。痛み・倦怠感改善、QOL向上。副作用なし。pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  • Welsh et al. (2013), PLOS One: 進行がん患者(n=未指定)で化学療法+IVC(1.5g/kg、週3回)。生存期間延長、毒性低減。journals.plos.org
  • Cullen et al. (2024), Redox Biology: ステージIV膵臓がん患者(n=34、ランダム化Phase II)。化学療法+IVC(75g、週3回)で全生存期間が8.3ヶ月から16ヶ月へ倍増、無増悪生存3.9ヶ月から6.2ヶ月へ延長。medicine.uiowa.edu
  • 日本国内の知見: 高濃度IVCでQOL改善(疲労・痛み・不眠減少)が報告。例: Takahashi et al.(未指定年)で4週間投与後、総合QOLスコアが45から61へ向上(p<0.01)。seisinkai.com

安全性と注意点

  • 安全性: 数万件の投与で重篤な副作用情報なし。主な副作用は軽度の静脈炎、吐き気 など。G6PD欠損症者は溶血リスクあり(事前に、G6PD欠損の有無を血液検査で確認する必要があります)。ladies-numanohata.com
  • 妊娠中はできるだけ控えましょう。
  • 投与プロトコル: 週2-3回、3ヶ月継続(Riordanプロトコル)。総投与量は体重1g/kg以上推奨(糖尿病患者は、事前に糖尿病に関する薬剤調整をしましょう)。

いかがでしょうか?

高濃度ビタミンC点滴療法(IVC)は、一般的な抗がん剤と異なり人体に対する毒性や副作用がほとんどなく、強力な抗がん作用を発揮し、がん細胞に対して選択的な毒性と治癒効果ならびに多くのガン患者さまのQOL改善の点で有望な治療法と言えそうです。

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