

ダイエット治療に通院している患者さんから多く頂くご質問の一つに、「脂(あぶら)を摂ると太りますか?」というテーマです。
結論から申しますと、答えは「ノー」です。
むしろ、糖質制限をしつつ良質な脂を積極的に摂取すれば、確実に“痩せる”ことができます。
本稿では、このケトン代謝を促すダイエット法について解説します。
糖質制限(低炭水化物食)をしながら脂質を積極的に摂取する食事するとケトン代謝(ケトーシス)を誘発され、体重減少し、この現象は多くの臨床研究で確認済みです。
本稿では、このケトン代謝を促すこのダイエット法について解説します。
1. ケトーシスの基本メカニズム通常、体内ではグルコースが主要なエネルギー源です。しかし、糖質摂取を極端に制限すると(1日20〜50g程度)、以下のような代謝シフトが起こります:
- グリコーゲン枯渇(24〜48時間以内)
→ 肝臓・筋肉のグリコーゲンが使い果たされる。 - 糖新生の亢進(一時的)
→ アミノ酸や乳酸からグルコースを合成(エネルギー効率は低い)。 - 脂肪分解の加速
→ インスリン低下により、脂肪組織から**遊離脂肪酸(FFA)**が血中に放出。 - 肝臓でのケトン体産生
→ FFAが肝臓でβ酸化され、アセト酮(AcAc)、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)、アセトンの3つのケトン体に変換される。 - ケトーシス状態(血中ケトン体濃度:0.5〜3.0 mmol/L)
→ 脳・心筋・骨格筋がケトン体をエネルギー源として利用(グルコース依存を脱却)。
ポイント:脂質を積極的に摂取することで、エネルギー不足を防ぎつつ脂肪分解を促進し、ケトン体を安定供給。低脂質+低糖質では単なる「飢餓状態」になり、筋肉分解が進むリスクあり。
2. 体重減少のメカニズム(5つの要因)
| メカニズム | 説明 | 文献的根拠 |
|---|---|---|
| ① 食欲抑制 | ケトン体(特にBHB)が視床下部で食欲中枢(NPY/AgRP)を抑制。PYY、CCKなどの満腹ホルモン↑ | Sumithran et al., 2013 (Obesity) |
| ② インスリン低下 | 糖質制限 → インスリン分泌↓ → 脂肪蓄積抑制・分解促進 | Volek et al., 2008 (Nutrition & Metabolism) |
| ③ 水分・グリコーゲン減少 | 初期の体重減少(1〜2週間)は主に水分(グリコーゲン1gにつき水3g結合) | Kreitzman et al., 1992 (Am J Clin Nutr) |
| ④ 脂肪酸化の増加 | ケトーシスで脂肪が主燃料 → 体脂肪燃焼↑ | Phinney et al., 1983 (Metabolism) |
| ⑤ 代謝効率の変化 | 蛋白質節約効果(ケトン体が脳のエネルギー30〜70%を担う → 筋肉分解↓) | Cahill et al., 1970 (N Engl J Med) |
3. 主要な臨床研究(RCT)
| 研究 | デザイン | 結果 | 引用 |
|---|---|---|---|
| Volek et al., 2009 | 低糖質ケト食 vs 低脂肪食(12週間) | ケト食群:体脂肪-3.5kg(低脂肪群-2.0kg)、トリグリセリド↓、HDL↑ | Nutrition & Metabolism |
| Bueno et al., 2013 | メタ解析(13RCT、n=1,400) | ケト食は低脂肪食より平均0.9kg多く減量(6〜12ヶ月) | British Journal of Nutrition |
| Hall et al., 2016 | 厳密制御(代謝室)、2週間 | ケト食で脂肪燃焼量が1日+89g(理論値と一致) | Cell Metabolism |
| Sackner-Bernstein et al., 2015 | メタ解析(低糖質 vs 低脂肪) | 低糖質食で6ヶ月で-1.2kg、12ヶ月で-1.1kgの追加減量 | Obesity Reviews |
注意:長期(1年以上)のデータは限定的。リバウンドリスクあり。
4. 実際のケトーシス誘導条件(目安)
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| 糖質 | 50g/日(総カロリーの5%以下) |
| 脂質 | 70〜80%(バター、アボカド、MCTオイル、ナッツなど) |
| タンパク質 | 1.2〜2.0g/kg(体重維持・筋肉保護) |
いかがでしょうか?
“脂(あぶら)は太る”は迷信であり、大きな間違いです。
